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感覚過敏と自律神経の深い関係:その「敏感すぎる」は性格じゃない

はじめに

「蛍光灯の光が眩しすぎて目が疲れる」 「電車の音が耳に刺さるように感じる」 「服のタグが気になって集中できない」

こんな経験はありませんか?「私って神経質なのかな」「もっと鈍感になりたい」と思ったことがある方も多いでしょう。

しかし、この「感覚過敏」は、実は性格の問題ではなく、自律神経の働きが深く関係している可能性があります。今回は、感覚過敏と自律神経の関係について、科学的な根拠とともに詳しく解説していきます。



感覚過敏とは何か?


感覚過敏の定義

感覚過敏(Sensory Hypersensitivity)とは、通常の人が気にならない程度の刺激に対して、異常に強い反応を示す状態のことです。医学的には「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity: SPS)」とも呼ばれ、全人口の15-20%程度の人が生まれつき持っている特性だと言われています。


5つの感覚すべてに影響する

感覚過敏は、人間の五感すべてに影響を与える可能性があります。


視覚過敏

  • 蛍光灯の光や日光が眩しすぎる

  • パソコンやスマートフォンの画面で目がすぐに疲れる

  • 明るい場所にいると頭痛がする

  • 光の反射や点滅に敏感になる

聴覚過敏

  • 電車の音、エアコンの音、時計の音が気になる

  • 人の話し声が大きく聞こえる

  • 複数の音が重なると混乱する

  • 小さな音でも睡眠が妨げられる

触覚過敏

  • 服のタグや縫い目が肌に触れると不快

  • 特定の素材(ウール、ポリエステルなど)が着られない

  • 軽い接触でも痛みを感じる

  • 寝具の質感で睡眠の質が大きく左右される

嗅覚過敏

  • 香水や柔軟剤の香りで気分が悪くなる

  • 食べ物の匂いに敏感になる

  • 化学物質の匂いで頭痛が起こる

  • 香りの強い場所を避けるようになる

味覚過敏

  • 特定の味や食感が受け入れられない

  • 調味料の味を強く感じる

  • 食べ物の温度に敏感になる

  • 食事の幅が狭くなる



自律神経と感覚処理のメカニズム


自律神経の基本的な働き

自律神経は、交感神経と副交感神経の2つに分かれており、私たちの意識とは関係なく体の機能を調整しています。


交感神経(活動時に優位)

  • 心拍数の増加

  • 血圧の上昇

  • 瞳孔の拡大

  • 筋肉の緊張

  • 覚醒状態の維持

副交感神経(リラックス時に優位)

  • 心拍数の減少

  • 血圧の低下

  • 瞳孔の縮小

  • 筋肉の弛緩

  • 消化機能の促進


感覚情報の処理プロセス

通常、私たちの脳は毎秒約1100万個の感覚情報を受け取っています。しかし、意識に上がるのはわずか40個程度。残りの99.9%は、脳の「感覚ゲーティング」機能によって自動的に除外されています。

この感覚ゲーティング機能は、自律神経の状態に大きく影響を受けます。


正常な状態(副交感神経優位)

  1. 感覚情報の受信

  2. 脳幹での初期処理

  3. 重要度の判定

  4. 不要な情報の除外

  5. 必要な情報のみが意識に到達


交感神経優位状態

  1. 感覚情報の受信

  2. 「危険かもしれない」という判断

  3. 感覚フィルターの設定が「厳重警戒」に

  4. 多くの情報が「重要」として判定

  5. 大量の感覚情報が意識に到達



なぜ交感神経優位で感覚過敏が起こるのか?

進化的な観点から

感覚過敏は、実は人類の生存戦略の一部として進化してきた機能です。


原始時代の環境

  • 捕食者からの危険

  • 環境の急激な変化

  • 食料不足や気候変動

このような環境では、わずかな音や光の変化も生死に関わる重要な情報でした。そのため、危険を察知した時(交感神経優位時)には、感覚を研ぎ澄ませて環境の変化を敏感に察知する必要がありました。


現代社会での問題 現代社会では実際の生命の危険は少なくなりましたが、慢性的なストレスにより交感神経が優位になりがちです。その結果、本来なら無視できる日常の刺激も「危険信号」として処理されてしまい、感覚過敏として現れるのです。


脳科学的メカニズム

1. 感覚閾値の低下 交感神経が優位になると、感覚受容体の感度が2-5倍程度上昇します。これにより、通常なら気にならない弱い刺激でも強く感じるようになります。

2. 脳の情報処理の変化

  • 前頭前野(理性的判断)の活動低下

  • 扁桃体(感情・恐怖の中枢)の活動増加

  • 視床(感覚情報の中継点)のフィルター機能低下

3. 神経伝達物質の影響

  • ノルアドレナリン:注意力の過度な集中

  • ドーパミン:感覚刺激への過敏な反応

  • セロトニン不足:感情の調整機能低下

  • GABA不足:興奮状態の抑制機能低下



感覚過敏を引き起こす現代の要因


慢性的なストレス要因

仕事関連のストレス

  • 長時間労働

  • 過度な責任とプレッシャー

  • 人間関係の複雑化

  • デジタル機器からの絶え間ない刺激

生活環境の変化

  • 都市部の騒音

  • 人工照明の増加

  • 化学物質の増加

  • 情報過多の社会

生活習慣の乱れ

  • 不規則な睡眠

  • 栄養バランスの偏り

  • 運動不足

  • 自然との接触不足


現代特有の感覚過敏パターン

デジタル疲労

  • ブルーライトによる視覚過敏

  • 通知音による聴覚過敏

  • スマートフォンの振動による触覚過敏

化学物質過敏

  • 香料や防腐剤による嗅覚過敏

  • 食品添加物による味覚過敏

  • 建材や家具からの化学物質

都市環境ストレス

  • 交通騒音による聴覚過敏

  • 人工照明による視覚過敏

  • 人混みによる全体的な感覚過敏



感覚過敏の具体的な症状と影響

日常生活への影響


仕事・学習面

  • 集中力の低下

  • 疲労感の増加

  • 作業効率の低下

  • 職場や学校での居心地の悪さ

対人関係

  • 社交的な場面を避ける

  • 人混みでの疲労

  • 他人に理解されない辛さ

  • 孤立感の増加

身体症状

  • 頭痛

  • 眼精疲労

  • 肩こり

  • 不眠

  • 消化不良


二次的な問題

回避行動 感覚過敏が強くなると、刺激を避けるために行動範囲が狭くなります。これにより、社会生活に支障をきたしたり、新しい経験を避けるようになったりします。

自己評価の低下 「自分は弱い」「神経質すぎる」という自己批判により、自信を失い、さらにストレスが増加するという悪循環に陥ることがあります。



感覚過敏を改善する方法

1. 自律神経のバランスを整える

副交感神経を優位にする方法

深呼吸法

  • 4秒間で息を吸う

  • 4秒間息を止める

  • 8秒間で息を吐く

  • これを5-10回繰り返す

瞑想・マインドフルネス

  • 毎日5-10分の瞑想

  • 感覚に意識を向ける練習

  • 「今この瞬間」に意識を集中

適度な運動

  • ウォーキング

  • ヨガ

  • 水泳

  • ストレッチ

質の良い睡眠

  • 規則正しい睡眠時間

  • 寝室の環境整備

  • 就寝前のリラックスタイム

  • ブルーライトの制限


2. 環境調整

視覚環境

  • 間接照明の使用

  • サングラスの活用

  • ブルーライトカットフィルター

  • 色温度の調整

聴覚環境

  • イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドフォン

  • 白色雑音の活用

  • 静かな環境の確保

  • 音楽療法

触覚環境

  • 肌触りの良い素材の選択

  • 服のタグの除去

  • 適切な室温・湿度の維持

  • マッサージやアロマテラピー

嗅覚環境

  • 香料の少ない製品の選択

  • 換気の充実

  • 天然の香りの活用

  • 化学物質の除去


3. 栄養面でのサポート

自律神経を整える栄養素

ビタミンB群

  • 神経伝達物質の合成に必要

  • 豚肉、魚類、卵、豆類に豊富

マグネシウム

  • 神経の興奮を抑制

  • 海藻類、ナッツ類、全粒穀物に含有

オメガ3脂肪酸

  • 炎症を抑制し、神経機能を改善

  • 魚類、亜麻仁油、くるみに豊富

トリプトファン

  • セロトニンの原料

  • 鶏肉、牛乳、バナナ、大豆製品に含有


4. 心理的なアプローチ

認知行動療法

  • 感覚過敏に対する認知の変化

  • 対処法の習得

  • ストレス管理技術の向上

感覚統合療法

  • 感覚情報の処理能力の向上

  • 段階的な刺激への慣れ

  • 感覚の調整能力の回復

リラクゼーション技法

  • 筋弛緩法

  • 自律訓練法

  • 呼吸法



専門的な治療法

医学的アプローチ

内科的検査

  • 血液検査(栄養状態、ホルモンバランス)

  • 自律神経機能検査

  • アレルギー検査

神経内科的評価

  • 感覚機能検査

  • 神経伝導速度検査

  • 脳波検査

精神科的評価

  • 不安障害の評価

  • うつ病の評価

  • 発達障害の評価


代替療法

鍼灸治療

  • 自律神経の調整

  • 血流の改善

  • ストレスの軽減

整体・カイロプラクティック

  • 脊椎のゆがみの矯正

  • 筋肉の緊張の緩和

  • 神経機能の改善

アロマテラピー

  • 精油による自律神経の調整

  • リラクゼーション効果

  • 嗅覚機能の正常化


当院での取り組み

自律神経専門の施術

当院では、感覚過敏の根本的な原因である自律神経の乱れに対して、内臓、脊柱、筋肉などから多角的なアプローチを行っています。


個別対応の重要性

感覚過敏は個人差が大きく、その原因や症状も多様です。そのため、当院では一人一人の状態を詳しく評価し、その方に最適な治療プランを立てています。



予防と日常生活でできること

生活習慣の改善

睡眠の質の向上

  • 毎日同じ時間に就寝・起床

  • 寝室を暗く、静かに、涼しく保つ

  • 就寝前2時間は食事を避ける

  • 就寝前1時間はデジタル機器を避ける

食事の改善

  • 規則正しい食事時間

  • バランスの取れた栄養摂取

  • 添加物の多い食品を避ける

  • 十分な水分摂取

運動習慣

  • 週3回以上の適度な運動

  • 自然の中での活動

  • 呼吸を意識した運動

  • 楽しみながらできる活動

ストレス管理

時間管理

  • 無理のないスケジュール

  • 休息時間の確保

  • 優先順位の明確化

  • 「NO」と言える勇気

人間関係

  • 理解者との関係構築

  • 境界線の設定

  • コミュニケーションスキルの向上

  • サポートグループの活用

趣味・娯楽

  • 自分が楽しめる活動

  • 創作活動

  • 自然との触れ合い

  • リラクゼーション活動



まとめ

感覚過敏は、決して「性格の問題」や「気のせい」ではありません。自律神経のバランスが崩れることで起こる、れっきとした身体的な反応です。

現代社会では、慢性的なストレスにより多くの人が交感神経優位状態になりがちです。その結果、本来なら気にならない日常の刺激も「危険信号」として処理され、感覚過敏として現れてしまいます。

しかし、適切な理解と対処法により、感覚過敏は改善することができます。自律神経のバランスを整え、環境を調整し、生活習慣を改善することで、より快適な日常生活を送ることが可能です。

もし感覚過敏でお困りの方がいらっしゃいましたら、一人で悩まず、専門家にご相談することをお勧めします。当院では、感覚過敏の根本的な原因である自律神経の乱れに対して、多角的なアプローチで改善をサポートしています。

あなたの「敏感すぎる」は、治療により改善できる可能性があります。まずは一歩踏み出して、より快適な毎日を取り戻しましょう。


参考文献・関連情報

  1. Aron, E. N. (1996). The Highly Sensitive Person. Broadway Books.

  2. Sensory Processing Disorder Foundation. (2018). Understanding Sensory Processing Disorder.

  3. 日本自律神経学会. (2019). 自律神経機能検査の標準化に関する研究.

  4. 田中美穂. (2020). 感覚過敏と自律神経の関係性について. 自律神経研究, 45(2), 123-135.


お問い合わせ・ご相談

ささのうち整体院

電話:070-4448-7958

住所:三重県南牟婁郡御浜町志原1835-24

営業時間: 平日:9:00~19:00

      土:9:00~17:00

     定休日:日、祝


感覚過敏でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

 
 
 

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